男性向けラノベでよくあるヒロイン(の1人)が妹、という設定。
男性から見るとどうなのかはさておき。実際に兄弟のいる女性からすれば「お兄ちゃん大好き♡」な健気でかわいい妹なんて、非現実すぎて架空の生き物みたいなものです。そういう幻想に憧れる人もいるんだなぁなんて、温い目になってしまうようなファンタジー。
しかし。これを視点と舞台を変えて、異世界でお嬢様がやると…なんと言うことでしょう。最高でした。
特に乙女ゲームの悪役に転生してしまったお嬢様と、彼女の絶対的な味方として登場する兄の組み合わせ。
兄妹といっても実は義理で恋愛対象に…とか、実の兄だけど…という禁断モノはなしにして。
あくまでも健全な兄妹でありながら、どんな状況でも彼女を守り、その幸せを第一に考えてくれるお兄様。こんなのときめかずにいられません。
見返りとしての(恋愛的な)愛を必要としないところも含めて、ヒーローってこういう存在だよねとため息が出るくらいかっこいい。
今回はそんな、好きにならずにはいられない最高のお兄様が出てくる作品を3つご紹介します。
「実際にこんな兄いるわけない」なんてつまらないことは忘れて、というよりそんな兄なんてドラゴン並みの架空の生き物なことは承知の上で、それでも。揺るぎない愛情と信頼をくれる「お兄様」沼にハマってみませんか。
悪役令嬢は溺愛ルートにはいりました!?
著者 | 玉露 |
イラスト | 條 |
レーベル | TOブックス |
発売年月 | 2020年8月 |
KindleUnlimited対応 | 対応✘ |
BOOKWALKER読み放題対応 | 対応✘ |
イケメン盛りだくさんの大人気作。どの世代の女性も(たぶん文字が読めるなら幼い女の子でも)楽しめる、女子の夢と妄想を限界まで詰め込んだ作品です!
悪役令嬢ルチアーナに転生してしまった主人公。目が覚めたら超絶美人って、スタートから最高です。
高慢で高飛車、当然嫌われ者だったルチアーナ。このままでは破滅エンドだわ!と焦りだすも中身はアラサー喪女なので、これまでのルチアーナの行いとのギャップがすごい。のに美貌はそのまま。結果、これまで彼女を嫌っていたはずの人々が徐々に彼女に夢中になり。気づくとあれ?みんな私を口説いてるようだけどまさかね…という夢のような展開。
もうご都合主義でもなんでもいい。とりあえず女子の欲を満たしてくれます。
本作にはルチアーナに惹かれるハイスペイケメン達がわんさか登場しますが、その彼らを押し除けて強烈な魅力を放つのが兄サフィアです。
飄々として軽薄そうに見えますが、その実力は魔術師団のトップに「折れない剣」と評されるほど圧倒的なもの。しかし自ら力を誇示することはなく、むしろ人を食ったような態度で相手を翻弄する性格でもあります。
なのに妹の守護者として、常にひとつも傷つけることなく、当然のようにルチアーナを守り抜くサフィア。
「それが、守るということだ。」
男前すぎて震えました。
男は言葉ではなく態度や行動にその本質が現れる、ということなのでしょう。
ルチアーナ、サフィア共に「このライトノベルがすごい2024」で好きなキャラランキング5位(作品自体は単行本・ノベルズ部門3位!)になるのも納得の、憧れの兄妹関係です。
こんなお兄様がそばにいたら…どんなイケメンが言い寄ってきても霞んでしまいますよね。
絶対的な信頼を寄せられる兄以上の存在に出会えるまで、ルチアーナの恋の道のりは遠そうです。
悪役令嬢、ブラコンにジョブチェンジします
著者 | 葉月秋水 |
イラスト | necoemi |
レーベル | SQEXノベル |
発売年月 | 2021年7月 |
KindleUnlimited対応 | 対応✘ |
BOOKWALKER読み放題対応 | 対応✘ |
こちらはアラフォー以上の方に特にオススメ。ある程度社会で頑張って生きてきた経験があると(あとネタ的にも)より主人公に共感できると思います。
社畜アラサー女子が転生したのは我儘な悪役令嬢エカテリーナ。シナリオ上彼女の兄アレクセイは、母を救えなかった負い目から彼女を全肯定し甘やかします。結果、2人は悪役兄妹として破滅するエンドでした。
若くして公爵という地位につき、美貌・知性・力を兼ね備えた超絶完璧人間のような兄。転生して目覚めた新生エカテリーナは、その兄の、完璧であるための努力とそうせざるを得なかった孤独な過去を見抜きます。
頑張ってもそれが当たり前だった大人の記憶がある主人公が、何かをするたびに褒めてもらい、無条件で「私の愛しいエカテリーナ」と溺愛してもらえる喜びは、きっと大人になった誰もが心の奥底で欲しているものでしょう。
守られ愛されるばかりでなく、自分も兄を全力で支えたい!と前世の知識を役立てて奮闘するエカテリーナ。彼女から真っ直ぐに愛情と信頼を返されて、お兄様の溺愛はさらに加速します。
そんな2人の仲睦まじさと妹を褒めたたえるアレクセイの美辞麗句の前では、エカテリーナに想いを寄せる皇子ミハイル君もどうしたらいいのか途方にくれてしまうほど。
エカテリーナと同い年の優秀な皇子なんですけどねミハイル君。人生経験を積んでしまった新生エカテリーナにはかわいい坊やとしか思われていません。
完璧なお兄様しか見えていない彼女に、彼が男として意識してもらえる日は来るのか…。
ミハイル君は辛いでしょうが、お兄様が素敵すぎるのでしょうがない。大人だからこそ、無条件で愛される誘惑には勝てないのです。
モブ同然の悪役令嬢は男装して攻略対象の座を狙う
著者 | 葉月秋水 |
イラスト | 転 |
レーベル | SQEXノベル |
発売年月 | 2023年8月 |
KindleUnlimited対応 | 対応✘ |
BOOKWALKER読み放題対応 | 対応✘ |
こちらはノリとテンポのいいギャグコメディ。
悪役令嬢として将来断罪されないために、主人公が男装してまさかの攻略対象に転身しようとする、ナナメウエどころか異次元の発想が最高な作品です。
「イケメンは作れる!」と10年かけて主人公エリザベスはイケメンメイクを研究し、鍛錬して身体を作り、モテテクを磨きます。すべてはヒロインに選ばれ攻略されるために。
その結果、エリザベスはおそらく誰よりも強くカッコいい、守られるより守る側の人間になりました。彼女なら何があっても大丈夫。あの人に不可能はない、と思われるくらいに。
しかし彼女の兄だけは彼女に物理的に守られながらも「僕のかわいいリジー」と兄として妹を庇護する心を忘れません。どんなに強くても、どんなにカッコよくても、たとえ自分を背負って走ってくれても。それでも君は大事なかわいい妹だと、何度でも伝えてくれるのです。
自立した女性に対して「君は強いから」「君なら1人でも大丈夫だろう」なんて、これまでの努力をなかったことにするような酷いセリフは絶対に言いません。
お兄様、ぽっちゃりさんなんですけどね。穏やかで包み込むような優しさの持ち主で、もう頬擦りしたいくらい愛おしくなります。
エリザベスも、どれだけぶっ飛んだ行動をしたとしても「お兄様が心配してる」となれば飛んで帰ります。帰る理由がお兄様。お兄様が心配して怒って泣くのが一番嫌。
そんな帰るべき港のような存在の兄。男女逆転している気がしなくもありませんが、それもまた微笑ましくて癒されます。
まとめ
お兄様至上主義の悪役令嬢達はベクトルが恋愛に向いていません。他者からの熱烈な好意は気付かずにすべてスルー。そしてお兄様達も絶対的な味方としてひたすら愛情を注いでくれますが、それはあくまでも身内としての愛です。なのでヤンデレ化したり拗らせたり、ましてや流行りの「君を愛することはない」的なクズ発言は一切なし!
作品自体は恋愛ものではありますが、この、本人達が恋愛をしていないことも安心して読める要素のひとつ。
だって恋愛って自分の心ひとつままならない不安定なものです。嫉妬や心変わりに、ストーリーを盛り上げるために必要な別離やすれ違い、嘘に秘密に裏切り。その度に傷つき揺れ動く心。
そういったものなしにお兄様の愛情の元、やりたいことに真っ直ぐ進む彼女達はいつでも安定しています。
若い頃のように体当たりの恋愛はできなくなった大人だからこその、恋愛の雰囲気だけ味わうようなちょっとずるい楽しみ方。
こんな素敵なお兄様がいたら恋愛なんてできないよね、とヒロイン達に共感しつつ安全圏からキラキラの世界をお楽しみください!
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