ラノベ空間 │ラノベレビューサイト

ボカロ小説って何?『カゲロウデイズ』や『千本桜』etc ボカロ曲を翻案したラノベを紹介

あなたはボカロ小説をご存知ですか?

ボカロとはボーカロイド、ならびにボカロ曲を題材にした小説。作詞作曲を手掛けたP(プロデューサー)が執筆することもあれば、ラノベ作家に依頼することもあります。今回は知ってるようで知らない、意外と深いボカロ小説の世界に、皆さんをご案内したいと思います。

ボカロ小説の定義とは

まずはじめにボカロ小説の定義を解説します。

ボカロ小説とは音声合成ソフト「VOCALOID」(ボーカロイド、略してボカロ)の制作楽曲をもとに書かれた小説をさします。

ボカロ文化に疎い人でも、MEIKO・KAITO・初音ミク・鏡音レン&リン・巡音ルカ、いずれかの名前は聞いたことがあるのではないでしょうか?

同社はボーカロイドを用いた創作活動のためのコンテンツ投稿サイト「ピアプロ」を開設し、ニコニコ動画とも連携しています。

ボカロPたちは自身が作詞作曲した歌をボーカロイドに唄わせ、それをニコニコ動画に投稿。

ランキングが可視化される過程でファンダムが形成され、固有の世界観を持ったボカロPそれぞれに、熱烈な支持者が現れ始めました。

ボーカロイドが発売された2004年3月以降、ニコニコ動画を中心に大量の新曲が発表されてきました。中でも視聴者の支持を集めた名曲は殿堂入りを果たし、高いストーリー性が評価されます。ボカロ曲のファンには中高生が多く、楽曲を翻案した小説・漫画・アニメにも、自然と注目が集まりました。

とはいえボカロ曲は歌に過ぎず、もとより筋道立ったストーリーが存在するわけではありません。

ノベライズに際し最も作者を悩ませたのは、リリックを文章に置き換え、小説の体裁に整える作業でした。

ボカロ小説の作者=ボカロPって本当?

ニコニコ殿堂入りを果たしたボカロ曲は、ほぼ例外なくメディアミックの洗礼に浴してきました。

その流れの中でボカロP自らがボカロ曲の世界観で小説を書き、そこに初音ミクや鏡音リンをモデルにしたキャラクターを登場させます。早い話がボカロP自ら手掛ける二次創作です。

ボカロ小説のメイン読者層は、普段からボカロ曲を視聴しボーカロイドにハマっている、十代の少女たちでした。

これはラノベの主力購買層と被っており、曲に織り込まれた思春期の心情や、尖ったワードセンスが光る厨二的世界観が、視聴者の共感を獲得したことと無関係ではありません。

一部のボカロ曲に顕著な悲劇的なストーリーも、ダークな魅力を膨らませこそすれ、マイナス要素にはなりませんでした。

ボカロ小説が小中高生の少女たちに受けた背景には、複合的要因が絡んでいます。

有力な説として、ボーカロイドがモデルのキャラが出演するボカロ小説は大手レーベルのラノベと比べセクシャルな表現が控えめなため、すんなり受け入れやすかったのではと指摘されています。

例としてボーカロイドの発売後、2004年~2010年にアニメ化されたラノべを挙げてみます。『灼眼のシャナ』『ゼロの使い魔』『涼宮ハルヒの憂鬱』『ご愁傷さま二ノ宮くん』『とある魔術の禁書目録』『化物語』『バカとテストと召喚獣』『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』……十代の多感な女子が手を出すには、やや過激なお色気シーンがネックになりますね。

2010年、ボカロ小説の先駆けとしてmothy(悪ノP)が『悪ノ娘 黄のクロアテュール』を小説化。

これは人気曲『悪ノ娘』をもとにしたノベルで、鏡音レン&リンをモデルにした王家の双子の、数奇な運命が綴られています。

ボカロ小説を語る上で外せない作品がじん(自然の敵P)の『カゲロウデイズ』。本作は自然の敵Pがリリースした一連のボカロ曲をアレンジした小説で、エンターブレインKCG文庫から全13巻刊行されています。2014年にはスタジオシャフト制作のアニメ『メカクシティアクターズ』が放映されるなど、並み居るボカロ曲の中でも、爆発的な人気を誇りました。シリーズ累計発行部数は900万部を超えており、名ボカロ曲・ボカロ小説として、不動の地位を確立しています。

2013年には黒うさPの楽曲『千本桜』が小説化。『悪ノ娘』『カゲロウデイズ』は楽曲を制作したボカロP自身が執筆しましたが、『千本桜』のノベライズおよびイラストは、一斗まるが担当しました。本作は発売初週にオリコン文芸部門の1位を獲得、のちにミュージカル化されています。

ボカロ小説の出版社は特に決まっておらず、新興のラノベレーベルから一般文芸レーベルに至るまで、様々な企業が参入しています。

これはボカロ曲のカラーとレーベルのイメージの兼ね合いによるもので、2015年8月にはVOCALOIDとGAMEに特化したラノベレーベル、VG文庫が創刊。卒業ソングの定番となった『桜ノ雨』や、囚人の少年と少女の切ない絆を描いた『囚人と紙飛行機』が、ボカロ小説として刊行されました。

片やSF風味の『初音ミクの消失』は一迅社、和風ファンタジーの『吉原ラメント』はアルファポリスから刊行されるなど、ボカロ曲のカラーに合わせ、拾い上げるレーベルは異なってきます。

嶽本野ばらや日日日がノベライズ

ボカロ小説の人気は2010年代に入っても衰えず、2013年にはれるりり(当社比P)が、自身のボカロ曲『脳漿炸裂ガール』の小説版を角川ビーンズ文庫から出版。翌2014年にはHoneyWorksのボカロ曲『告白予行練習』が『告白実行委員会〜恋愛シリーズ〜』と題され、同文庫より小説化。角川ビーンズ文庫は少女向けのラノベに力を入れているレーベルなので、この選択は英断でした。

2016年に公開されたアニメ映画『ずっと前から好きでした。〜告白実行委員会〜』は女子中高生を動員し、興行収入3億円を記録。シリーズ累計発行部数250万部を叩きだしたのちも、メディアミックスを経て愛され続けています。

ボカロ曲、ボカロ小説の派生文化として、「歌ってみた」や「歌い手」にも注目してください。「歌ってみた」とはボーカロイドが歌った曲を人間がカバーすることで、彼等は「歌い手」と称されました。ボカロ曲の歌い手として有名になった中には、実際に歌手デビューした者も多くいます。一番の出世頭はハチ名義でボカロPとして活動していたシンガーソングライター・米津玄帥。トップアーティストにのし上がった現在も、彼がボカロP時代に生み出した名曲の数々は、多くのファンに親しまれています。

話変わって『サリシノハラ』は、みきとPが歌い手・りぶの1stアルバムに提供したボカロ曲。小説化に従い筆をとったのは、『下妻物語』で有名な小説家・嶽本野ばらでした。

ラノベ作家の日日日もボカロ小説を手掛けた一人。PHP研究所から刊行された『ECHO』はCrusher-Pリリースのボカロ曲で、電波的な世界観とグロテスクな描写が中毒性を生み出しています。

まとめ

以上、ボカロ小説とは何かの説明でした。なお、ボカロ小説には初音ミクや鏡音リンらボーカロイドがモデルのものと、オリジナルキャラのみ登場させるものの二種類があります。前者が『千本桜』、後者が『カゲロウデイズ』といえばわかりやすいでしょうか。『千本桜』小説版主人公の名前が初音未來になっているのは、曲に命を吹き込んだボーカロイドへのリスペクトと、ファンサービスを感じさせますね。


Amazon Kindle Unlimited




hutami

hutami

埋もれてる名作を掘り起こしたい。 ラノベランキング&クチコミサイト「ラノベ空間」運営。 あなたの感想をお待ちしてます(登録不要) サイト:http://hutami-blog.com Youtubeチャンネル:https://www.youtube.com/@user-dx3wl7bk4y ご連絡はxまで。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。