皆さんはライトノベルと小説、いわゆる一般文芸の違いをご存知ですか?普段意識せず読んでいると、いざ問われても簡潔に答えられませんよね。今回はそんな方々に向け、ラノベと小説の違い、ラノベと一般文芸のジャンルの差異を解説していきます。最後までお付き合いください。
ラノベとは中高生をメインターゲットに据えた、文体の軽いエンタメ小説
まずはじめにライトノベルの定義をご紹介します。
ラノベとは即ち、十代~二十代の若者をメインターゲットに据えた、文体のライトなエンタメ小説のこと。
もともとライトノベルとは日本で生まれた言葉。英語のlightとnovelを組み合わせた和製英語に当たり、略称はラノベです。
ライトノベルの定義には諸説存在するものの、ライトノベルレーベルから発行されているもの、公式サイトや作者自身がラノベと断言したもの、漫画・アニメ調のイラストが表紙や挿絵を飾っているもの、というのが最低限押さえておきたいポイント。
デフォルメされたキャラクター性を重視し、若者に馴染みやすい、砕けた文体を意識していることも挙げられます。
メイン読者層は十代前半から後半の中高生。主人公やヒロインの年齢もその範囲に留まり、誰もが経験する思春期の悩みやコンプレックス、恋愛や友情、挫折や成長が、物語の根幹に関わってきます。
なおメインとなる読者の年齢を踏まえ、ごく一部の例外を除いたラノベでは、過激な性描写を避ける傾向にありました。
小説家の森博嗣はラノベの特徴として会話や改行の多さを指摘。早い話ラノベとは、わかりやすさに特化したエンターテイメント小説なのでした。
代表レーベルは電撃文庫・角川スニーカー文庫・富士見ファンタジア文庫・MF文庫J・コバルト文庫・ガガガ文庫・一迅社ノベルス・星海社FICTIONSなどで、数々の名作を輩出し、多くの読者を獲得してきました。
近年はライトノベルから派生したライト文芸・キャラ文芸が勃興。ラノベがアニメ寄りの萌え絵でキャラをアップに描くのに対し、パステル調のキレイめなイラストで差別化を図りました。対象年齢はやや上がり、社会に出て働いている、二十代~三十代の男女がターゲット。少し前に「ブルーライト文芸」と呼ばれ、青基調のエモい表紙でバズった小説群も、このジャンルに属します。
該当するのはメディアワークス文庫・集英社オレンジ文庫・幻冬舎文庫・創元推理文庫・ハヤカワ文庫JA・ポプラ文庫・中公文庫・新潮文庫nex他多数。
ブルーライト文芸の定義は少年少女が引き構図で佇む青系の表紙、および夏の田舎を舞台にしていること、主人公と恋愛関係に発展する少年、もしくは少女が消えること。「消える」は病死や事故死の他に超常現象による存在の消滅も含み、ストーリーは切なさ重視で「エモさ」に主軸が置かれています。
ブルーライト文芸の小説を多く輩出しているスターツ出版は、Yoshi『Deep Love』、美嘉『恋空』、chaco『天使がくれたもの』を筆頭に、2000年代初頭のケータイ小説ブームを牽引した会社でした。
メディアワークス文庫から刊行された河野裕『いなくなれ群青』や、ガガガ文庫から出た八目迷『夏へのトンネル、さよならの出口』も、ブルーライト文芸の系譜に連なる作品。
大手出版社が起ち上げたライト文芸レーベルは、ラノベを卒業した読者の受け皿として育ち、好調な売り上げを記録。今後も市場の成長が期待されるジャンルであるのは疑うべくもありません。
ライトノベルと小説のボーダーラインは薄い
ラノベと小説の違いは、実の所明確にされていません。小野不由美『十二国記』は講談社X文庫より刊行後、講談社文庫を経て新潮社文庫から発売されました。
父親と娘の近親相姦を扱った問題作『私の男』で第138回直木賞を受賞した桜庭一樹は、富士見ミステリー文庫より『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』を刊行。
のちに角川文庫から出し直された際は、萌え系のイラストが省かれ、ヤングアダルト向けに改変されました。
現在一般文芸で活躍している有川浩改め有川ひろは、2003年に『塩の街 wish on my precious』で第10回電撃ゲーム小説大賞をとってデビューしています。
このようにラノベと小説の境界線は非常に曖昧。
ラノベレーベルから刊行された作品が、数年後に一般レーベルから出し直されることも少なくありません。
ラノベ作家としてデビューしたのち一般文芸に移行した作家には、橋本紡・乙一・米澤穂信・三雲岳斗・壁井ユカコ・沖方丁・中村うさぎ他、錚々たる顔ぶれが揃っています。『プラナリア』で第124回直木賞を受賞した山本文緒はコバルト文庫出身の少女小説作家。児童文学作家にシフトした荻原規子も、嘗ては『西の善き魔女』で人気を集めました。
これは逆も然りで、『物語』シリーズが爆発的ヒットした西尾維新は、2002年に『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』で第23回メフィスト賞を受賞。
『吸血鬼ハンターD』『魔界都市新宿』『魔界医師メフィスト』『妖魔シリーズ』を世に送り出し、ライトノベル作家の先駆けと目される菊池秀行は、『ファイナルファンタジーシリーズ』のイラストレーター・天野喜孝とタッグを組んでいました。
中にはラノベと一般小説を股にかけ、両ジャンルで活躍著しい作家も存在し、コンスタントに名作が生み出されています。
ラノベはキャラの掛け合いに、小説は登場人物の心理描写や文体にこだわる
ラノベと小説の違いとして、まず注目したいのは文体の差異。ライトノベルの字義通り、ラノベの文体は小説に比べ、「軽い」と見なされています。
この軽さはキャラクター同士の会話の多さや改行の多さに絡み、全体の読みやすさを重視した結果。
故に語り手となるのは読者が自己投影や感情移入しやすい中高生で、彼や彼女の一人称視点で物語が進むのが基本構造。
その為「私」「僕」「俺」の一人称語りが多くなりがち。
また、ラノベでは登場人物を「キャラクター」と称します。これはフィクショナライズされた呼び方で、読者が頭に思い描くのは、表紙や挿絵の絵柄に準じた架空の人物です。一方の小説には、読者の想像を補助するイラストがありません。したがって大半の読者は、三次元の実写的な人間を思い浮かべ、物語を読み進めていきます。
ラノベの命がキャラ同士の掛け合いなら、小説の命は文体とストーリー。通常の小説にはイラストがない分、文章そのもので読者を楽しませるテクニックや、ストーリーの整合性が求められます。
そもそも小説とは、「作者が描きたい人間や社会を自由な散文で表現する文学形態」「話の展開と主人公の具体的性格に必然的関わりがある物語」と定義付けられてきました。そこから枝分かれしたのがライトノベルなので、両者は別物ではなく、ラノベも小説の一形態……進化系に含まれるのです。
ボーダーレス化したラノベと小説 ラノベを買うのは恥ずかしくない
ここまでラノベと小説の違いを述べてきたものの、現代では両者のボーダーレス化が進み、両者の差異はほぼ消滅しました。
とりわけ一般文芸ジャンル、エンタメ分野で活躍している作家は、イラスト表紙に殆ど抵抗を覚えません。
第166回直木賞候補作にノミネートされ、本屋大賞と高校生直木賞をダブル受賞した逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』は、カクヨム投稿小説を加筆修正したのち、早川書房のコンテストに応募したもの。
同作の表紙は人気イラストレーター・雪下まゆが手掛けている為、広義のラノベと言えなくもありません。
中高生に絶大な支持を集める望月けい、スオウなどの絵師も、積極的にライト文芸のイラストを描いています。
ライトノベルを買うのが恥ずかしいと思っている方は、それこそが杞憂なので安心してください。
中高生対象のラノベレーベル電撃文庫は、20代・30代の読者に向け、メディアワークス文庫を創刊しました。
美麗なイラストが表紙を飾っているのは電撃文庫と同じですが、メディアワークス文庫の場合はより背景重視の引いた構図となっており、従来の挿絵は入っていません。
中にはイラストを使っていない小説もあるので、会話の比重が大きいラノベに飽きてきた方におすすめしたいです。
まとめ
以上、ラノベと小説の違いやラノベの定義を解説しました。アニメや漫画文化が世間に受け入れられていくのに伴い、一般文芸の表紙もイラストレーターが手掛けるようになった為、現代におけるラノベと小説にはほぼ差異が存在しません。ラノベを買うのに抵抗を感じている方は、自信を持ってレジでお会計を済ませてくださいね。


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