青春時代と聞いてあなたは何を連想しますか?思い浮かぶ対象は千差万別人それぞれでしょうが、放課後の部活や音楽活動を生き甲斐にしていた方も多そうですね。
人生における最も多感な時期に、一生を賭けてもいいと思える何かと巡り逢えることは、それだけで恵まれているのかもしれません。
クラスに居場所がない一部の人にとっては、部活動こそが学校に行く目的と成り得るでしょうか?
今回はそんな輝かしくもほろ苦い青春の全てが詰まった、部活・音楽活動ライトノベル5選を紹介します。
ヴェールの聖女 〜醜いと誤解された聖女、イケメン護衛騎士に溺愛される〜
著者 ヴェールの聖女 ~醜いと誤解された聖女、イケメン護衛騎士に溺愛される~, 山田露子 イラスト 鳥飼やすゆき レーベル Mノベルスf 発売年月 2022年12月
京都アニメーションでアニメ化された綾野ことこ『ツルネ ―風舞高校弓道部 ―』は、やや珍しい高校の弓道部が舞台の青春スポーツもの。タイトルのツルネは漢字表記だと弦音となり、弓を射る音に通じます。
本作の見所は弓道部の人間模様。登場人物がほぼ全員男子なので、『Free!』にハマった女子はより楽しめるかもしれません。
先輩・後輩・幼馴染・ライバル、それぞれとの関係性を軸に展開するストイックなドラマは見ごたえたっぷり。弓道に青春を捧げた少年たちが切磋琢磨する群像劇には、刹那の輝きが凝縮されています。
和装フェチとしては毎回凛々しい袴姿を見れるのも嬉しく、弓を構えた姿勢の美しさに惚れ惚れ。劣等感や嫉妬に苛まれ煩悶する、思春期の心理描写も巧みです。
競技シーンには他のスポーツと異なる「静」の気迫が満ち、読みながら居住まいを正してしまいました。
自他ともに認める弓道大好きっ子な奏が、中学最後の試合のトラウマを克服し、新たな仲間たちと大会優勝を目指す再生ストーリーとしても読め、風舞高校弓道部の頑張りを応援したくなることうけあい。奏を中心に繰り広げられる、男と男の駆け引きにも妄想が捗ります。
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若木未生『グラスハート』は限界ギリギリまで研ぎ澄まされた心理描写がグサグサ刺さる名作。「女だから」と無理矢理バンドを辞めさせられた主人公・西条朱音が、音楽を愛する気持ちと反骨精神全開で成り上がっていくストーリーは、一気読み必至の面白さ。むしろ今だからこそ多くの人に読んでほしい作品で、マジョリティに排斥されるマイノリティの苦悩、男社会における女性の生き辛さに焦点を当てています。
朱音が所属するバンド「テン・ブランク」の演奏シーンは圧巻の迫力で、漲る情熱が伝わってきました。
一方でバンドメンバーは様々な問題を抱えており、音楽から離れたら最後、社会不適合者の烙印を押されてしまいかねません。
それが特に顕著なのがキーボード担当の坂本一至で、ボサボサ髪に分厚いメガネの見た目に加え、コミュニケーションに難ありな性格が災いし、誤解される場面が多いです。メンバー同士もことあるごと衝突し、バンドの方向性を模索しています。
朱音の才能に惚れ込んでスカウトした天才プロデューサー・藤谷直季のカリスマ性も素晴らしく、次はどんなサプライズを仕掛けて驚かせてくれるのか、やることなすこと目が離せませんでした。
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渡航『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』は、友達のいない高校2年生・比企谷八幡が教師にスカウトされ奉仕部に入り、生徒たちの依頼を解決していく話。
本作の見所は主人公・比企谷八幡のひねくれた語り口。まずもって「青春とは嘘であり、悪である」と題した作文を提出するあたりから、一筋縄ではいかない性格が伝わってきますね。
そうなってしまったのには過去の根深いトラウマが関係しており、人間不信を拗らせ切った八幡が奉仕部での活動を通し、徐々に周囲への信頼を回復していくのも醍醐味。
ぼっちを誇りにする八幡と才色兼備の毒舌ヒロイン・雪ノ下雪乃のテンポ良い掛け合いも楽しく、爆笑を誘います。
相次いで奉仕部を訪れる生徒たちも個性豊か。スクールカースト上位の人気者や男の娘のテニス部員など、八幡と違い学校に馴染んでいるかのように見える面々も、人に言えない秘密やコンプレックスを秘めているのが生々しくて共感を呼びました。
個々の相談に乗るうちに彼等の事情に肩入れし、自ずと好感度を上げていく八幡の姿は、ラノベ主人公として応援したくなるバイタリティーに満ちています。
ツンデレ優等生・雪乃の他にも元気じるしの由比ヶ浜結衣、ゆるふわギャルの一色いろはなど、いずれ劣らず魅力的で選べないヒロインが揃っているのも長所。色恋沙汰に疎い八幡を取り巻く彼女たちの動向も、物語を盛り上げていました。
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米澤穂信『氷菓』は古典部シリーズの記念すべき第一作目にあたる学園ミステリー。本作の見所は省エネ主義を信条とする高校生・折木奉太郎と、好奇心のかたまりなお嬢様・千反田えるのとぼけた掛け合い。「私、気になります!」が口癖のえるは、一旦興味を示したら凄まじい行動力を発揮し、それに奉太郎が手を貸すのが様式美。
学園で起きる事件は総じて地味なものの、読者の盲点を突くトリックが冴え、全く退屈しません。大掛かりな舞台装置や道具を必要としないからこそ、即興の機転で密室を作り上げた犯人の発想力、それを理路整然と解き明かす奉太郎のかっこよさが際立ちます。
何事にも無気力無関心だった奉太郎の変化も見所で、えると共に放課後を過ごすうちに、彼女が追い求める謎の答えを気にかけ、33年前の文化祭の真実に辿り着く展開に引き込まれます。
奉太郎の親友で情報通の福部里志、奉太郎の幼馴染で里志に片想い中の伊原摩耶花も良いキャラをしており、ああでもないこうでもないと4人で討論する光景をずっと眺めていたくなりました。
ゆっくりじっくり進展していく、奉太郎とえるの恋模様も最高。
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望公太『小鳥遊ちゃんは打ち切り漫画を愛しすぎている』は、タイル通り打ち切り漫画を偏愛する後輩と先輩の話。
毎日のように漫画研究会の部室に入り浸っては、プロ漫画家志望の主人公が持ち込む雑誌を読み漁り、極端な持論を展開する小鳥遊ちゃんの毒舌に痺れます。
それはアンケート至上主義の功罪や読者の可視化による延命措置など、思わず「あるある」と頷きたくなる内容ばかりで、メタ視点の説得力を併せ持ち、全国のクソ漫画愛好者に刺さりまくり。
彼女の熱い語りに触発され、誰しもお気に入りの打ち切り漫画を思い浮かべるはず。
打ち切り漫画の新刊ゲットに託けた書店デートやファミレスでのサブカル談義は、オタク憧れの青春といえるのではないでしょうか。
ラブコメのセオリーを微妙にずらすキャラ造形や展開、ちょっとした叙述トリックも小気味よく、サービス精神旺盛な作者の遊び心に「そうきたか」と唸らされます。
ラストでは小鳥遊ちゃんの重大な秘密が明かされ、テクニカルに張り巡らされた伏線の数々に脱帽しました。
まとめ
以上、部活・音楽活動ものライトノベル5選でした。奉仕部や古典部など、変わり種の部活が存在するのもラノベの特徴ですね。放課後の時間を持て余す若者にとって、部活動やバンド活動は、情熱の受け皿になるのかもしれません。部活内で生じる人間関係、世界観の広がりにも興味が尽きません。
あなたはどの部活に入りたいですか?
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